ベトナムと少女

20年ほど前にベトナムを旅した時、ホイヤンという朱印船時代に日本人町があった土地へ向かう途中、美しい浜辺に見せられ休憩したビーチ「ラコン湾」

そこで砂浜に寝そべって潮風を浴びていると一人の少女が片言の英語で声を掛けてきた。

彼女は古い日本の貨幣を差し出し、その価値を聞いてきた。

手に取って見ると確かに大戦前の日本の貨幣である。

リュックの中からベトナムのガイドブックをとりだし歴史をひも解いてみると、嘗てこの浜に日本軍が上陸したことがあるらしい。

この貨幣はその時代に日本兵が残していったものを彼女が拾い集めたのだろう。

更に話し込んでいくと、彼女の年は16歳。父と母はベトナム戦争時代に無くなり弟を抱え、レストランで働きながら暮らしているという。

生活の足しにこの古い貨幣を日本人に売りたいのだが、いくらで売ればいいかと聞きたかったという。僕には古銭を集める趣味は無いし、まして錆びてボロボロになりかけた古銭に大した価値は無いと想ったが、期待に瞳を輝かせる彼女を前にそんなことは言えなかった。

その日の行動に必要でないと思われるお金を彼女に渡しその古銭を買い取ったのだが、どこの国籍でどこに住んでいるのか教えてほしいと、一生懸命に片言の英語で語りかけてくる彼女に手帳を破いて日本の住所を書いて渡した。

それから1年、帰国した僕はそんなことがあったことも忘れていたある日、ベトナムを旅した日本の若者から一通ので紙を受け取った。

その封筒には彼女が僕に書いた手紙が同封されており、切手を買う金のない彼女は、日本人の旅行者である彼に頼み込んで日本に帰ったら届けてほしいと彼に手紙を託したと、彼の手紙が添えられていた。

それから20年、彼女との文通は今も続き、彼女は結婚し二人の子供に恵まれたが、台風で御主人の漁船が流され一文無しになり、ラオスへ出稼ぎに行き、そして今、子供達に囲まれ穏やかな日々を過ごしている。

この写真は、彼女が結婚して最初に生まれた男の子と撮った写真と、今年送られてきた手紙に添えられていた家族との写真である。

出会いとは不思議なものだと思う。今も彼女「ベ・ティ」は僕のことを日本のお兄さんと呼んでくれる。

01_s.jpg
2013_02_07_s.jpg
Calendar
<< August 2017 >>
SunMonTueWedThuFriSat
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031
search this site.
archives
recent comment
others
admin